パーン雑感



 
 ☆ 出会い編

 昔のことなのでちょっと記憶があいまいな部分もあるのですが、それは確か高校卒業を控えた春か、大学に入ってすぐくらいのことであったと思います。
 新宿の某大型書店を何という当てもなくぶらぶらうろついていた、ということを考えると、もう大学に入った後だったかも知れません。(当時からケチだったので、定期で行けないような所にはなかなか行かなかった筈/笑)
 私はさほどSF読みというわけではないのですが、ハヤカワ文庫SFのブルーの背表紙に並んだタイトルをなんとなく眺めるのが好きで、書店をぶらつく時には大抵その書棚の前というのも決まったルートに入っていたのですね。そんないつもの巡回コースの中で、ふと平積み棚の一冊が目を引いたのでした。
 緑がかった空に毒々しい赤い星の浮かぶ、いかにも異星の風景の中、大きく翼を広げて飛翔する巨大な竜の背にまたがって髪をなびかせる女性の小さな姿。──そう、シリーズ一冊目の「竜の戦士」でした。
 確か、そのときかかっていた帯に「シンデレラストーリー」的なあおり文句が書かれていたのを覚えています。まあシンデレラはともかく、「竜に乗って空を飛ぶ」というシチュエーションに心をくすぐられ、結構な厚さのその本を、何気なく手に取ってみたのでした。

 裏表紙の作品紹介を読み、続いて序章から本編へと軽く目を通してみたところで、あっさり心は決まりました。
 火を吐く竜が出てくる話だけれど、いわゆる「剣と魔法のファンタジー」ではなく、異星の原住生物から遺伝子操作で作り上げられたという「竜」。母星の記憶がとうに失われた植民地惑星で、独自の文化を育てながら、宇宙空間から定期的に降り注ぐ胞子生物の侵略を撃退する人々の話! そんな硬質な骨太SF設定を背景に持ちながら、全体の空気はどこか中世的で全くSFっぽさが感じられないというそのバランスの妙にやられました。
 速攻買い求めて帰路の電車内からのめり込み、帰宅後も食事と風呂の時間を除いてむさぼり読み、夜を徹して読み進めるうちに、すっかり惑星パーンの魅力に取りつかれておりました。
 とにかく竜たちがいい! 強い精神感応力を持った男女が「感合」の儀式を経てその騎士となり、終生変わらぬ忠実な友として文字通り心を分け合うようになる…というその設定もさることながら、個々の竜の性格や言動(直接口をきくわけではなく、伴侶の騎士との間に通じるテレパシーだというのがまたよしv)がめちゃめちゃ魅力的でたまりませんでしたvv
 そしてヒロインのレサとヒーローのフ-ラルが、緊張感を持った共闘関係から次第にかけがえのない伴侶になってゆく様も、18歳お嬢ちゃん当時の大庭の心を大変強く揺さぶったものでありましたよ!
 このフ-ラルが(ふーらるではない。あくまで、ふ・らる)、まためっぽうかっこいいイイ男なのですよう〜v 自信家でちょっぴり皮肉屋で、厳しく鋭い眼を持ち、忍耐強く先見の明もあり、信念を貫くにあたっては一片の妥協もない、全身これ意志の固まりといったリーダー。目的もなく物を言う男ではなく、超然としたポーズの下に聡明な精神と情熱を隠してる。しかも念のいったことに、堂々たる逞しいハンサムですよ?
 もう理想です、理想!(笑)
 真面目な話、私の「ヒーロー像」というものの6割方はこのフ-ラルにあると言っていいと思います。(あとの4割は、雑多なマンガやアニメや小説や映画その他諸々のごった煮状態)

 正直、第一巻はちょっと訳文が堅くて読みにくい部分もあり、初めて知るパーン社会の諸々が腑に落ちるまで少し時間がかかったのですが、そんなものは何のその。世界設定にもストーリーにも、どんどん出てくる魅力的なキャラクター達にもぞっこん惚れ込んで、そのまま当時の既刊、「竜の探索」「白い竜」へと一気になだれ込んで行ったのでした。
 …その後の、新刊が出るまでの長さと言ったら…(とほほ)
 奥付を見ると最初の三冊はとんとんっと間を置かずに刊行されていたようですが、その後はだいたい一冊出るのに2年はかかっている感がありますね。2004年現在、正伝8巻外伝3巻が(上下分冊は一巻として)邦訳されているのですが、まだまだ続きはいっぱいあるんですよう〜。
 フ-ラルとレサの時代の正史はひとまずおしまいだとか言われてましたけど、でも現時代という意味ではまだ、7巻で出て来たジェイジとアラの息子とイルカの話とか、若き日のロビントン師の話とかもある筈ですし、そりゃもう読みたいものがいっぱいです。ああっ待ち遠しいっっっ(><)
 ううう。そりゃまあ英語で読めればいいんでしょうが、パーンは長い上に特殊用語が多いので、つい挫折してしまうのよ…。(実際「竜の挑戦」には邦訳の出る2年ほど前に挑戦したのですが、結局半分くらいしか理解できてなかったです〜〜)

 新刊が出れば、その厚さをものともせずに一気にのめり込むように読んでしまい、その後数年を「ああ早く続きを続きを〜〜」と悶絶しながら何度も既刊の読み返し。その繰り返しでもう二十年ですか……(遠い目)
 多分いつかは出会って読んでいたのではないかしらと思うこのシリーズですが、まだ心の柔らかい真性お嬢ちゃんであった時代にこの本に出会えたことは、ある意味ひとつの財産であったと思います。
 私が今「好きな本は?」と問われたら、無論いろんなジャンルで何冊も挙げられるとはいえ、SFの中ではきっとこのシリーズを入れることは間違いないです。(でもSFの中での一番は、やっぱりハインラインの「夏への扉」…v)



 
 ☆ 妄想編

 このサイトに来て下さっている方には周知の通り、わたくし「何を見ても聞いてもオスアンー!」という性向を強く持っております。
 当然、上述のようにかっこいいフ-ラルに惚れ惚れしながら、つい「青銅ノ騎士で大巌洞ノ統領なオスカーv」だとか、「その伴侶の洞母アンジェvv」というような想像を広げては、へにゃへにゃ顔が緩んでしまうのであります。えへ〜〜。
 ついでに言うと、最近ではパーン本編を読んでいるときに「女王黄金の卵」、というような表現を見るだけで、なんとなくにんまりしてしまう自分がここに(笑)。…ほんとにバカですね…。

 もちろんアンジェ歴よりパーン歴の方がずっと長いことですし、フ-ラルはフ-ラルであってどんなに「似てるーv」と思ってもオスカーではなく、レサはレサであって決してアンジェではない(彼女の方はキャラも結構違うし)、ということに変わりはないのですが、でもパーン世界にアンジェキャラを置いてみては一人ぐふぐふ楽しむということは大好きなのでした♪
 実際、オールキャラ(その頃はトロワまで)をパーンの住人としてあてはめてみて大喜びしていたこともありますよ。当然「うーんちょっとムリがある?(^^;)」というキャラもあったものの、結構それらしく役割分担させられた部分もあって、ちょっぴり、ほんのちょっぴり、「…これでパロディ書いてみたいかも…」という思いがきざしたことも事実であったりします。でもまあ、アンジェなパロに「ニメンス」とか「ラモス」とかの竜の名前をそのまま使うのもヘンだし、さりとて一々竜の名前を考えるのなんてめんどくさー! と思って、あっさり諦めたものですが。
 ちなみにそのときつらつら考えてたのは、
 「ジュリアス→堅物の城砦ノ太守(眉間にシワはお約束…)」
 「クラヴィス→青銅ノ騎士で前の大巌洞ノ統領(そりゃもうジュリ太守とは仲悪し)」
 「ランディ→若き褐ノ騎士」
 「リュミエール→大巌洞ノ竪琴師」
 「オスカー→青銅ノ騎士で飛翔隊長、後に統領(当然洞母はアンジェ♪)」
 「マルセル→緑ノ童児ノ騎士。後に蒼ノ火蜥蜴チュピ(!)を感合(笑)」
 「ゼフェル→鍛治師ノ師補」
 「オリヴィエ→元は工人で後に青銅ノ騎士(ヌ-トンですな)」
 「ルヴァ→竪琴師ノ長(ワイン好きならカティスの方が…とも思ったけれど、"知恵者" ということで^^;)」
…等々、女の子たちや教官・協力者その他に至るまで、ああでもないこうでもないとあれこれ考えては喜んでました。
 結構、ファックス役にレヴィアスとか、ジャクソム役としてティムカとかいいと思ったんだけどなー。でも全部そのままやると、オスカーやアンジェが40代(いや下手したら50代!?)になってしまうし!(笑)

 ──というような一人遊びをこっそり楽しんでいた頃からはや2年。最近になって「私もパーン好きですvv」という方とお友達になった大庭に、また新たな波がどっぱーんと訪れたのでありました。
 とりあえずネックになるのは竜の名前。それは間違いなくそうなんだけど、でも考えてみたら『炎』とか『風』とかいう意味の単語の最後に『ス』をつけるだけで竜っぽくなるんじゃない…? と、そのようなことをふいっと思い付いてしまった瞬間に、その波に飲み込まれてぶくぶく底まで行ってしまったのですねー。
「青銅竜フラムスの騎士オスカー」とか、「褐竜ヴァンスの騎士ランディ」とか…。ああああ、なんだかちょっと惹かれてしまうわーっ。
 ううむ。うううむ。正直『パーン』は好き過ぎてパロディ創作なんてできないわというような気持ちもある一方で、軽いお遊び気分のものなら結構書けないこともないんじゃない?と思ったりもして、ココロは千々に乱れるのでした。きゅ〜ん。

 …まこと、妄想のネタというのは尽きませんなあ……。



 
 ☆ 幻の…

 私がまだアメリカに住んでいた頃ですから、2000年前後だったのではと記憶しているのですが、一時期アメリカのパーン公式ページが「ついにパーンの竜騎士シリーズ映像化!」というニュースで盛り上がっていたことがありました。
 …確かあれってオフィシャルサイトだったと思うし、冗談ではなくマジっぽかった…筈…。(←圧倒的な英語力の不足で、今イチ自信はない^^;)
 映画ではなくTVシリーズとして計画されていた筈でして、おぼろげな記憶では、確か2001年秋のシーズン初めに「シリーズ・プレミア」を流す予定で話が進んでいた──のだったと思います。
 アメリカのTVシリーズって、とりあえず一本パイロットフィルムを作って流してみて、好評だったらシリーズ化し、数字が取れなければその一本でおしまい、というシステムが取られているようなのですが、まずはその一本目であるパイロット版の製作にかかりました!っていうようなアナウンスが出ていたような。
 原作者ご本人の「大変喜ばしく、わくわくしています」みたいなコメントも載ってたし、ちゃんと竜のCGを作成中だというようなニュースまでが流れていた……のですが。
 その後、時々思い出したようにサイトのチェックをしていたのですけれど、ある時期からぱたりと何の続報も上がって来なくなっちゃって。そのうち、そのサイト自体がなくなってしまったのでした。とほ〜〜。(その後別URLにて、一応パーン公式サイトはやっているようです)

 おカネとか何とか、いろいろ大人の事情で途中でポシャっちゃったんだろうなあ。うーん、残念と言えば残念な。
 と、思っていたら、つい最近になって "Dragonrider Thrown from WB" と題されたトピック(2001年3月29日付。よく3年半も残ってたなあ)をネットの海から拾い上げました。
 ──ああ、やっぱり(^^;)
 やはり映像化が困難ということで企画打ち切りとなってたようですが、まあ今から思えばそれはそれで良かったのかも…。
 だって当時公式サイトにサンプルとして上がっていた竜のCGって、正直言ってトロワのポリゴンよりも更に落ちるくらいの出来だったしぃ〜(爆)。今どきの映画の見事なCGを見なれちゃった目には、いかにもカクカクと浮いた感じでがっかりな代物にしかなってなかったと思うんですよねー。

 本音を言えば、今の最新技術の粋を尽くして、空を舞い糸胞と闘う竜の姿を描いた映画を作ってもらえたらめちゃめちゃ幸せなんですが、でも「あなたの心の中で…」っていうのも、これはこれで良いものなのかも知れません。
 幻は幻のまま、時々「どんな作品になってたんだろ?」とあれこれ想像するだけで十分幸せです……けど、早く続刊の翻訳出してもらえたらもっと幸せになれるんですがっ!!
 はっきり言ってそっちの方がよっぽど切実よーっ、きゅーーーっ!(><)







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